欠田誠のマネキンの世界
第4話 マネキンの匿名性について
 マネキンは服を着せて展示するためのもの、ディスプレイのツールとしての役割を持った商品でもあります。マネキン制作には、市場のニーズにどう応えるかというテーマと同時に新しいニーズをどう喚起させるかと言うテーマがあります。彫刻家としての才能に更に時代の好みに対する鋭いセンスが加わらなくては、良いマネキンは作れません。そして作家の個性やオリジナリティは尊重されなくてはなりません。原型作家は自分の作った作品に責任を持たなくてはなりません。そして作品に誇りを持たなくてはなりません。日本のマネキン界に、マネキンの匿名性という意識が強まってきたのはいつごろからでしょうか、私は元来、創作活動に匿名はありえないと思っています。

 商品としてのマネキンは、近年、特に個性化、多様化の進む市場の変化に対応するためにより効率の良い作品のリニュアルや改造、そのための工法の工夫などが課題になっています。オリジナルマネキンの開発はリスクを伴う作業です、然し作家は夢を持って果敢に挑戦し続けなくてはなりません。企業の持ち物である在庫マネキンを自由自在に改造し効率よく対応する作業が増えることによって匿名性マネキンが市場に流通することになります。よりクオリティの高い商品作りは、技術や効率以前にオリジナルを尊重すると言う強い心がなくてはならないと思います。

 次に、著書「マネキン 美しい人体の物語(晶文社)」で企業ブランドか、作家の個性かについて記した、一部を引用したいと思います。 ヨーロッパやアメリカではマネキンは買い取り制なので、マネキンは「財産」という考え方をする。マネキンのディーラーは街にショールームを持っており、客はそこで気に入ったマネキンを選んで購入するというシステムだ。マネキン作家は会社と契約をして作品を作り、作家のキャラクターが即、会社のキャラクターになる。原型作家の個性はとても大事にされており、アーティストとしてのマネキン作家の地位は高く評価されている。レンタル制に基づく日本では、マネキンはその商品が破棄されるまで、制作したマネキン会社の財産だ。財産をどのように運用していくかがレンタル業の基本になっている。製品の出来がよいこととメンテナンス力が、レンタル対応のポイントになる。これは買い取りが商習慣になっている海外の市場でも強い競争力になっており、日本のマネキンは海外で高い評価を得ている。日本のマネキン企業はそれぞれの会社が個性を持っており、それはその企業の伝統でもある。開発したマネキンはその企業のブランド商品だ。作家はその会社のブランド商品作りに協力するという立場で仕事をする。だから企業が作家の個性を大切にして企業のカラーに埋没しないようにしなくては、作家が育たない。一方、作家は狭い企業の枠を超えて世界的視野にたった物作りをこころがけなくてはならないだろう。(以下略)

 今日市場でのマネキンに対する要望は非常に多岐にわたっています。それらのニーズにマネキン企業がどのように応えていくのか、企業の物作りに対する姿勢と能力が問われます。