欠田誠のマネキンの世界
第5話 人体の造形 マネキンの体形とポーズ
 人体の美しさや魅力を表現すると言う意味では、マネキンも人体彫刻と変わらないと思います。然しマネキンは今日のファッションを美しく着こなして販売促進に役立つこと、効果的なディスプレイのツールとして店のイメージや売り場のイメージを表現するための商空間創りに欠かせないものなどの目的を持って作られる人体造形だと言えます。そのために人体彫刻とは異なった造形上の制約や工夫が生じます。それはマネキン造形の魅力でもあると思っています。

 マネキンの制作は、美術学校の彫刻科の卒業生がマネキン会社に就職してマネキン制作を始めると言うのが一般的です。然しリアルな人体彫刻が得意だったからと言ってよいマネキンが作れるわけでは有りません。それにマネキンの造形は美術学校で学ぶことは出来ませんので、マネキン会社に入ってから学ぶことになります。したがってよい指導者や良いクライアントに恵まれると言うことはとても大事なことです。

 リアルな人体彫刻と言っても美術学校によって考え方や表現はかなり異なるようです、それは指導者(彫刻家)の違いによると思います。いずれにせよ、マネキンのような美しいプロポーションの女性は彫刻のモデルとしてはあまり好まれないようです。

 スーパーモデルの代わりにマネキンがある、というのもマネキンの役割の一つです、マネキンはその時代の理想的な体形を求めて作られる造形だと言えます。

 美術学校で彫刻を学んだ後、マネキンの制作を始めた人達はその造形の違いにとまどい、苦労するものです。マネキンの制作は作家個人の資質によるところが大きいので一概には言えませんが、東京造形大学の彫刻科で佐藤忠良先生の指導を受けた人達は、マネキンの造形に比較的なじみ易かったように思いました。

 佐藤忠良さんは美しいプロポーションの女性を作品にされた彫刻家だと私はおもっていますが、そんな人体造形に対する美意識が学生達の中に育まれていたのだと思います。

 マネキンは服を着せるためにサイズの制約があります。サイズの制約の中で形を作ることは、とても不自由な事のように思われるでしょうが、サイズの制約は形を作るための大きな目安にもなる、便利な事でもあります。

 人間の体は、サイズは同じでも形は決して同じでは有りません。そこがマネキン造形のポイントになります。マネキンは裸の人体を作りますが、マネキンは裸の状態で使われる事はありません。原型作家は服を着て展示される状況を想定して人体を作りますが、実際に市場では何処で、どんな服を着せられて、どんな展示をされるか、分からない、ここから先は作者の思いの及ばない世界です。

 どんなファッションでもパーフェクトにきこなす体形やポーズのマネキンを作る事は不可能な事です。私は、美しい体形のマネキンに服を着せれば服は美しく見える、という考えがマネキン造形の基本だと思っています。れらのニーズにマネキン企業がどのように応えていくのか、企業の物作りに対する姿勢と能力が問われます。