欠田誠のマネキンの世界
第7話 マネキンの足元
 マネキンの足元はあまり目立たない部分のようですが、マネキン全体の中ではとても重要な部分なのです。マネキンの機能を損なわずにマネキンをいかに安定した状態で正確な位置で立たせるか、というテーマは今でも、よりよい方法を模索し研究途上にあります。

 マネキンの足元はマネキン変遷の歴史そのものといえると思います。

 マネキンを彫刻のように台ごと作ったり、台座に固定してしまうのであれば簡単な事ですが、マネキンは靴を履かせたりパンツをはかせたりしなくてはなりません。特に近年ではマネキンでファッションをコーディネートして見せるという展示方法がより顕著になってきました。その場合どのような靴を履かせるかと言う事は重要な事です。

 今、日本のマネキンの足のサイズは23センチから24センチの靴が履けるように作っています。この大きさは日本女性の標準的サイズなので靴の種類が豊富に揃っておりマネキンにはかせる場合、靴を選びやすいわけです。マネキンの身長は176〜178センチで作りますので実際にそのぐらいの身長の女性の足のサイズはもっと大きいのが普通ですが、昔から女性は大足にはコンプレックスを持っており足は出来るだけ小さく見せたいという願望があるのでマネキンの足が小さすぎるというクレームを私は聞いた事がありません。

 靴のサイズはそれで良いとしても女性の靴にはヒールの高さに種類があります。今マネキンが対応しなければならないヒールの高さの種類は、メーカーによって多少の違いがありますが、3センチ、5センチ、7センチ、9センチです。同じマネキンがこれ等の異なったヒール高の靴を人間のように自由に履きこなす事は出来ません。この問題を解決するためにいろいろな試みがされて来ました、足首を球体間接にして可動するようにしてみたり、ウレタンのようなフレキシブルな素材を使ってみたり、然し必ずしも成功したとはいえません。

 美しい足の形はローヒールの靴を履いた時とハイヒールの靴を履いた時とでは筋肉の張りが違って異なった美しさが有るばかりではなく全体の何気ないしぐさまで変わってくるものです。ただいろいろなヒールの靴を履けるだけではそのマネキンの足はただ靴を履く道具に過ぎないのです。どんなポーズでも作れる可動システムのマネキンが、全体の表現力で劣るのはそのためだと思います。

 更にブーツも履かなくてはなりませんし、近年は新たな和装、浴衣ブームで洋装マネキンが足袋を履いて下駄をはけるようにとの要求も少なく有りません。

 更に厄介な事に女性はサンダルを履いた時とハイヒールの靴を履いた時とでは気持ちも変わると言います。これをマネキンの造形で表現する事は至難の業ではありますが。原型作家はそれらに無関心であっては良いマネキンを作る事は出来ません。

 マネキンの足元を今回は靴とのかかわりで語ってみましたが、それと関連してマネキンをどのような構造、システムで立たせるか、これはマネキンのハードな面で重要なテーマです。次回はその事について考えてみたいと思います。