欠田誠のマネキンの世界
第12話 人形作家・中島ひでこ展・とマネキン制作

 東京千駄木のギャラリーKINGYOで、人形作家 中島ひでこさんの個展(12月11日〜16日)が開かれました。丁度個展の出品作を製作中に中島さんは(株)アップル社で始めてマネキンの原型制作にチャレンジして、とてもユニークな新しいマネキンを完成させました。人形作家にはいろいろなタイプの作家が居ますが、近年 彼女が制作発表してきた人形は全身を作っても衣装を着けず、顔を作っても極力彩色を施さず、今年の個展では顔がメインで他に裸の全身像一点とほぼ等身大のこれも裸の半身のボディーが一点、後は顔のみ、全部で10点ほどの作品と作品を写したモノクロの写真とによる展示でした。顔にはいっさい彩色をせず、かつらもつけず、正に、素の顔の造形といった世界です。作品について「記憶の片隅にあるものに、感情を入れて形にしてみた。その形は、人に似ている。入れたはずの感情は、消えてしまい、硬い皮膚のような入れ物は、時を凍らせた中で居る。(以下略)」と語っています。感情を入れて形にしたその形は人に似ているという人とは彼女の場合 顔 と言えるでしょう。人の顔に強い関心を持っており、いつもスケッチブックを持ち歩いて興味のある顔に出会えばスケッチをするとの事です。しかしその人の顔を写そうとしては居ないようです、いろいろな顔(人)に出会う事によって自分の中にあるいろいろな思い 感情が誘発されその思いをその形に込めて自分の内部の形態感覚に従って表現しようとしているのだと思います。彼女にとってメーキャップや髪形は素の形を化けす物であり、あくまでも素の形の造形に強いこだわりを持っているようです。ボディーについてもせっかく作ったボディーに服を着せて隠してしまいたくないと言います。

 マネキンの顔はメーキャップやヘアーのデザインを想定して作ります。メークやかつらのデザインは顔の表現の中でとても大きな役割を持っています。ボディーは服を着せた時の効果を想定して作ります、マネキンはあくまでも服を着せるためのもの、ファッションを表現するもの、ディスプレーを通して時代を表現するものです。素のマネキンはそれだけの表現力を持っていなければなりません。私は ・美しい魅力的なボディーに服を着せれば服は美しく見えるもの・だと思っています。そこには、服に着られるボディーになるか、服を着て表現するボディーになるか、の違いがあります。顔の無いヘッドレスマネキンが多く使われていますがそれらはどれもほぼ同じように見えます、それだけに広く対応出来ますがイメージの訴求力はそれほど強くはありません。

 顔がつくことによって年齢やテイストが決まり、ボディー全体が感情を持ち作者の思いを宿す事になります。中島さんの顔やボディーに対する造形観はある部分でマネキンの造形に通じるものを感じます。マネキンの概念にとらわれずもっと自由な発想でマネキンを作ってみよう、という思いと、マネキンを作ってみたかったという彼女の思いが今回のマネキン制作の実現につながりました。自身、メークやかつらに対するこだわりはなかったようですが、彼女の作った顔は専門のメーキャップアーチストのイメージを大いに刺激したようです。結果メーキャッパーとの素敵なコラボレーションの作業になったと思います。人形作家にとってサイズの制約の中での制作は初めての経験だったそうですが、かえって作りやすかったとのことです。服を着るためのボディー制作でいろいろな発見があったとの事で、これからの制作が楽しみです。
写真:
 ・個展出品作より 写真提供 中島ひでこ