欠田誠のマネキンの世界
第15話 ヘッドレスマネキンの話

ヘッドレスマネキン

 顔のあるマネキンが多く使われる時代と、マネキンが減ってボディーや顔の無いヘッドレスマネキンが多く使われる時代は、ある周期で繰り返されてきました。

 それは景気の変動と歩みを共にしてきたと言えます。不景気になれば企業や店が先ず節約するのは宣伝費の節減で、ディスプレーに経費がかけられなければ当然マネキンの需要も減るわけですが、それは、不況時代における私達一般大衆の購買志向の変化、つまり売れ筋商品の変化、それに伴う売り方(見せ方)の変化、だったと思います。いずれにせよ時代に同調、助長するようなディスプレーは時代の閉塞感を募らせるものであり、閉塞感から人々を解放するのもまたディスプレーの力であり役割でもあると思います。

 元来マネキンはアート性の強い付加価値の高い商品ですが、服を着せてディスプレーに使われるものですから、使い勝手のよさもマネキンの評価を左右する大事な要素です。マネキンは造形性、デザイン性といったソフトな面と、使い勝手の良さといったハードな面の良さを兼ね備えていなければなりません。欧米の市場に比べて日本の市場は特にハード面での評価が高く求められるようです。服の着脱をよりし易くする為の各ジョイントの研究開発や、軽くて丈夫な製品作りのための素材や工法の研究開発などです。

ヘッドレスマネキン使用例

 数ヶ月前のことですが、マネキンのハード面を担当されているアップルの技術者、尾澤卓朗さんと一緒にマネキンの市場をリサーチしましたが原型をつくる立場の私が案内役だったはずでしたが、使われている日本製のヘッドレスマネキンの多くは、私は、マネキンを見ただけでは誰が制作したものか、何処のマネキンメーカーの製品なのかも判りません。自分が制作したものかどうかも確信が持てない、むしろマネキンを立たせるためのジョイントの機構の違いなどを見て尾澤さんに、これは何処製のマネキンか教えられる有様でした。ヘッドレスマネキン独自の魅力、個性があるはずですがそれがなかなか見えてこない。今ヘッドレスマネキンの作り方の多くは、リアルな顔のついたマネキンの、顔の部分を切ってヘッドレスマネキンに流用する方法で作られ、又クライアントの要請に応じて既製のマネキンを改造してヘッドレス化される事が多く、初めからヘッドレスマネキンとして開発される機会がほとんど無いのが現実ではないかと思います。

 私もヘッドレスマネキンの制作に多くかかわって来ましたが、私の中でのヘッドレスマネキン開発のルーツは1960年の末ごろ、七彩工芸時代(現・七彩)に開発したSAシリーズマネキン(写真参照)の制作にさかのぼります。あの頃は顔の無いマネキンは存在しなかった時代だったと思います。同じような顔のマネキンが数多く使われていた時代に、より造形的でアート性の強いマネキンの可能性にチャレンジして制作したように記憶しています。そのSAマネキンは顔のあるマネキンのようにイメージを固定させる事がなく、幅広いディスプレーや売り場作りに対応出来る事もあって、思いがけず、かなり長い期間ヒット商品であり続けたマネキンとなりました。

 次回は、抽象的な顔のマネキンについて、お話します。
写真上より:
 ・ヘッドレスマネキン SAシリーズ 1968年頃製作 七彩工芸(現・七彩)時代
  ヘッドレスマネキンのサイズ (HEIGHTー169cm、BUST SIZEー80cm、WAIST SIZEー55cm、HIP SIZEー84cm)
  原型制作 欠田 誠
 写真 七彩カタログより

 ・ヘッドレスマネキン使用例
  大丸デパート 売り場のフロアディスプレー
 写真提供 欠田 誠