欠田誠のマネキンの世界
第36話 マネキン制作の工程 テレビ放送にちなんで

 12月7日(月)〜11日(金)にヒストリーチャンネル・職人の道具「マネキンをつくる」が放送されました。マネキンの原型をミニチュア制作から粘土原型完成、FRP樹脂になったマスター原型に彩色をして完成させるまでを其の過程で使う道具と共に紹介すると言った内容でした。この工程の中に粘土原型から型を取ってFRP樹脂のマネキンを作る、作業工程が加わればマネキン制作の全工程を知る事ができます。今回は其の部分を簡単に紹介しようと思います。私はこの番組制作のために原型を1体作ることにしました。マネキンの原型制作やメークの作業はマネキンの企業では商品開発に関わる最もシークレットな作業ですので其の作業を一般に公開することは現時点ではほぼ不可能な事だと思います。この度の企画は秩父の私のアトリエでの作業だから可能だったと言えるでしょう。メークの仕事はメークアーチストの加藤茂樹さんに協力をお願いました。幸い、加藤さんが勤務しているアラ アートの荒木直俊社長の理解と好意的な協力を得る事ができました。私はマネキンの造形をそれほど特殊なものとは考えていませんが、同じような原型を作るにしても、其のつくり方は、数あるマネキン企業でお互いに知られていないのが現状だと思います。私はいつも、もっと便利で効率の良い原型の作り方や、より扱いやすい素材は無いかなど模索を続けていますが、今はこの度のテレビでの工法が自分ではベストだと思っています。

 私のマネキン作りの師は村井次郎さん(1904−1982 ファイバーマネキンの時代かずかずのヒット作を作り日本のマネキン界の発展に貢献された)と、フランスのマネキン作家・ジャン ピエール・ダルナさん(1922−2000 1980年初来日FRP樹脂による工法を生かした新しいシステムによるファッションマネキンを制作、日本のマネキン界に大きな影響を与えた、今日のマネキンの礎を築いた)ですが、村井さんはアトリエに人を入れることはされなかったので氏の制作中の原型を見ることは出来ませんでした。村井さんは制作を専ら自宅のアトリエで行い会社のアトリエを使うことはありませんでした。アトリエは企業秘密の場所と言う意識からではなく、制作中煩わされることを避け制作に没頭された事と制作途上の作品を見られることを好まなかったのだと思います。

 ダルナさんは制作中の作品をあえて人に見せて意見を求めたり製作意図を説明したり確かめながら制作を進めるタイプの作家でした。

 原型制作中にいろいろな立場の人の意見が聞けることや他の技術者の協力が得られる事などが企業内作家のメリットだと思っているのですが、私は、いつも作品が思い通りに手際よく仕上がらず、それにもっと良い物が出来るのではないかと言う思いはいかんともしがたく、制作途中は出来るだけ人に見られたくないというのが本音です。まして今回のように撮影されながら原型を制作すると言うのは、カメラの前で失敗は許されないと言う思いでとてもプレッシャーのかかる作業です。大きなチャレンジでもありました。

 私には、あらゆる機会を通してマネキンの付加価値の魅力をより多くの人たちに伝え、マネキン界の発展、活性化の為に少しでも役立たなければならない使命があると思っています。

 メークの加藤さん、型取り FRP樹脂による製作に協力いただいた池田 連さん、この番組の制作に当たられたオルタス・ジャパンのスタッフの皆さんの情熱にも支えられて出来た、ドキュメント番組だと思います。
写真上段より:
 1)左:粘土原型に切金で割り型のための区切りを作る
   右:石膏で型を取る
 2)左:石膏型を粘土からはずし、石膏雌型完成
   右;石膏雌型にFRP樹脂を張り込み、樹脂が硬化したら型からFRP原型を割り出す
 3)表面をペーパー・ヤスリで磨いて仕上げ、各パーツにジョイント金具を取り付け、組み立てる
 撮影 池田 連、筆者