欠田誠のマネキンの世界
第37話 マーケットの変化とマネキン
 2008年アメリカで派生した金融危機をきっかけとした世界同時不況の最中2010年を迎えました。私たちは今までにも何回か不況という波を経験してきました。近くは1980年後半に始まったバブル景気が1991年頃から崩壊し、やがて構造不況と言われた深刻な不況時代を迎えました。

 マネキンはバブル景気全盛の時でも すでに、昔(1950年~60年中頃、イージーオーダー服全盛の時代、服はマネキンに着せて売る時代で大量のマネキンが売り場で使われていた)のように数多く使われる時代ではなく、マネキン企業は内装、店装の分野に事業を広げ売り上げを伸ばしてきました。マネキン以外のこのような分野で事業を拡大してきた企業ほどバブル崩壊のダメージは大きかったようです。

 このバブル景気崩壊後、マネキン企業の多くは、原点に戻ってマネキンを見直し、企業のスリム化を計りマネキン企業の再構築を目指しました。

 マネキン産業は百貨店やファッション店、とりわけファッション産業と深い関わりを持ちながら成長してきました。今回世界を襲った金融危機は深刻な消費不況を招き都心の百貨店の閉鎖など厳しい情況が続いています。1月の新聞では全国の百貨店と主要スーパーの2009年売上高が記録的な低水準となった事、それは26年ぶりの低水準で、百貨店の前年割れは13年連続で、減少率が10%を超えるのは始めてだ。と報じています。主力商品である衣料品の不振が大きいと言われていますがそれは同時にマネキン業界の不振に繋がっている事は言うまでもありません。かつて百貨店は、地の利、売り場面積、イメージ、信用度、全国展開による圧倒的な量、集客力などに勝ると信じられていたので、多くのメーカーが百貨店内の出店を目指してきました。

 マネキン企業も百貨店でマネキンが使われることは全国で数多くのマネキンが安定して使われるメリットがありました。然し今はメーカーやブランドが、百貨店出店は経費に見合うメリットが無いと百貨店出店から撤退する動きが見られます。

 然し出店しているメーカーやブランドの商品に魅力が無いことや、先にあげた百貨店の利点に甘んじて来たことが百貨店不振の要因の1つであることも事実だと思います。

 更に、百貨店やスーパーが記録的な低迷に陥った背景には一般大衆の消費スタイルの急激な変化があると思います。新しい買い物のスタイルとしてインターネット通信販売も一般の生活に定着してきました。これまでに、日本人特有の好み、ブランド志向、贅沢、同類思考、など、それに対する過剰なサービス、これらが特異な今日のマーケットをつくって来ました。

 昨年(2009年)11月に始めて来日したアメリカの映画監督、マイケル・ムーア(1954年生、資本主事社会の問題に真っ向から挑む社会派ドキュメンタリー映画監督)が銀座を訪れて、世界の高級ブランドや海外のカジュアル衣料店の進出を見て「ニューヨークでも見られない、銀座はブランドのディズニーランドだ」とテレビで語っています。
 同じ地域に幾つもの百貨店がひしめいている様も欧米では見られない日本独自の姿です。更に、同じような品物を売って小売の主役を担うことは難しい事です。

 似たような事は日本のマネキン業界にも言えることです。

 マネキンは一般の人々が直接買い求めるものではなく、いわゆる間接商品であり、店のイメージをビジュアルに伝え,商品の販売促進に役立つ為に使われるものです。本来、店の繁栄に寄与する魅力的な造形物です。だとすれば今日の百貨店の不振、メーカーの不振は、理由はともあれマネキンの力不足、魅力あるマネキンが生まれない私たちの力不足も大きな要因だと言えるのではないでしょうか、今、マネキンの企業は、積極的にどのような商品(マネキン)を開発し、それをどのように伝え(見せる)そしてどのように流通させる(販売)のか、それを見直し、再構築する事が課題だと思います。マネキンの力で市場をどのように活性化し変えることが出来るのか、私たちは社会にどのようなメッセージを発信していくのか、マネキン造形の真の意味が問われていると思います。