欠田誠のマネキンの世界
第41話 マネキンの造形・ミニチュアと実作

 時代と共に新しいファッションが生まれそして変わり、常に変化し続けるマーケットと共にマネキンも其の姿を変えてきました。マネキンには時代の好みや店のアイデンティティーと言ったものを如何にビジュアルに形として表現するかと言う役割があります。今日の多様化、個性化の時代にはそれなりにマネキンも多種多様な種類や表現が求められます。街で何気なく目にしているマネキンも少し注意して見れば其の店や売り場によってマネキンの配置、組み合わせ、マネキンの色やメークなど、商品の見せ方、売り方にデザイナー独自の工夫が込められている事が分かります。更にシーズンやテーマの変化に対応した新しいディスプレーによって楽しく魅力ある環境を作るためにマネキンはなくてはならない重要なツールでもあります。マネキンはそれらの期待に応えるばかりでなく、デザイナーに新しい夢を喚起させるような魅力ある造形物でなくてはならないのです。

 今回はマネキン制作で基礎になる、ミニチュアの制作について述べてみたいと思います。

 マネキンの制作は、実物大の原型を実際に粘土で制作する前にミニチュアで十分に検討して制作のコンセプトを出来るだけ明確にしておくことが大切です。マネキンは何体かの異なったポーズを組み合わせて(例えば座ポーズを加えるなど)1シリーズとして開発するのが一般的です。ミニチュアの段階でそれぞれの腕のポーズや顔の向きや、各ポーズを組み合わせた時の効果などを十分検証しておくことが、実作での迷いを少なくし制作を効率よく進める為にも大切です。ミニチュアは作者がイメージを整理して構想をまとめ確認する為のものでありますが、私は4分の1サイズでミニチュアをかなり正確に作るようにしています。正確なバランスで作ったミニチュアは写真で見ると実物大のマネキンと見まちがえるほどイメージが伝わりますので仕事の打ち合わせやプレゼンテーション等にも効果的です。ミニチュアを細部まで正確に作るということは細かいとこるまで丁寧に仕上げると言う意味ではありません。形のプロポーションを正確に、腕のポーズや手先の表情、顔の向きやヘアースタイル、が分かるように、そして、全体のイメージがミニチュアで表現されていることが大切です。これらがマネキンのミニチュアに必要な条件です。後はミニチュアを見ながら正確な心棒を作り原型制作にかかります。ミニチュアを機械的に拡大すればよいマネキンが出来るわけではないと思いますが、私はひたすらミニチュアを正確に4倍に拡大する作業に徹する事にしています。この作業は職人的な修練とデッサンを伴う結構難しい作業です。

 粘土の真ん中に心棒が入るように慎重にモデリングを進めます。粘土制作の段階で新たに気がつくことなどで修正や迷いが生じることはよくある事ですが。そんな時には簡単にミニチュアから離れることなく、より深くミニチュアを観察し、正確なバランスや寸法で拡大出来ているかを検証することで多くは解決できるものです。と言うのは制作中の作品が良く無いなど、いろいろ迷う時はミニチュアを正確に拡大できていない場合が多いからです。ミニチュアを正確に拡大する事は寸法を拡大すると同時に形を正確に拡大し甦らせる事です。

 作家はいつも、もっと良い物を作りたい、作れるのではないかという欲があるものですが、制作にはある意味での手離れのよさが必要です。そのためにもミニチュアの段階で時間を惜しまず十分検討を重ねる事が大切です。とは言うものの、作品を作るたびに新たな迷いや夢が生まれるものです。それが次の作品を作るエネルギーになるのだと思います。形をコピーする作業を創作とはなれた仕事と見下して思いがちですが、ミニチュアの良さ、鮮度を失はずに実作で表現することはとても難しい事です。
写真上段より:
 1)ミニチュアの段階で幾通りかの効果的な組み合わせを想定し、ポーズや手の表情を決める。
   腕や手を変えることでポーズバリエーションが増える。
 2)平行して顔の制作を進めながら、マネキンのイメージをより鮮明にさせる。
 3)ミニチュアが決まれば一体ずつ制作するよりは数体並べて同時に原形制作を行う事が望ましい。
   シリーズの統一感が得やすい。

 ・2009年 アップルアトリエにて   写真・筆者・