欠田誠のマネキンの世界
第59話 2011年のクリスマス ディスプレイ

 2011年は東北大震災、原発事故、未曾有の円高、更に、タイの大洪水で多くの日本企業が被害を受けるなど、日本にとって大変厳しい受難の年でした。海外でも欧州財政危機など多くの課題を残す年となりました。ディスプレイはいつも世相を敏感に反映しながらその歴史を重ねて来ました。世界が多くの課題を抱えた今年のクリスマスのディスプレイにはどんな変化が見られるのでしょうか。特に日本では原発事故以来、節電の意識が高まっており以前のような豪華さを競うようなイルミネーション・ディスプレイは見られないのは当然でしょうが、それだけにデザイナーや各企業の工夫がどのように見られるか興味が有ります。

 パリのクリスマス ディスプレイは毎年注目されるところですが、シャンゼリゼ通り恒例のイルミネーションが始まったのを機に久し振りにパリに出かけました。かつてパリ プランタンデパートのアートディレクターを務めディスプレイの世界でも活躍していたマネキン作家、私の師でもある、ジャン ピエール・ダルナさんやギャラリーラファイエットのアートディレクターのオリビエ・アドネさんが去り、特にダルナさんが亡くなられてから、私には、パリは遠い存在となっていました。

 日本でもパリでも今年のクリスマス ディスプレイの共通のテーマは省エネ,エコ対策のようです。然しパリのクリスマスは一年最大の行事、お祭りであるばかりではなく最大の商機でもあって、ディスプレイにかける意気込みは予想以上のものがありました。シャンゼリゼ通りのイルミネーションは円形の鏡状の反射板を照明の周りにぶら下げ、明かりが反射してきらきらと輝く,省エネで効果的な仕掛けが見られました。これは今年初めて採用されたとの事です。ルーブル美術館にあるガラスのピラミッドのライトアップの照明はLED照明によるもので2年後には美術館周辺をLED照明にきりかえ消費電力を大幅に削減する計画との事です。これは日本の企業との協力によるものです。

 東京西新宿のクリスマス・イルミネーションは毎年、斬新なデザインと華やかさで人気を集めていますが、今年は例年の華やかさは無いものの全照明を太陽光発電で行うシステムで、時のテーマをレアルに反映したディスプレイとして注目されます。他のディスプレイも「日本に元気を」との応援のメッセージが照明で発信されているなど、復興にかける人々の思いが今年のクリスマス ディスプレイに込められていることが分かります。

来年も厳しい年が予想されますが災害地の一日も早い復興と日本政治の混迷からの脱皮を祈願し、2012年がより活力のある明るい年であることを祈りたいと思います。
写真上段より:
 1)パリのデパート,ギャラリーラファイエット、照明が数秒ごとに変化する。
 2)デパートのウィンドウ・クリスマス ディスプレイ。すべてのウィンドウが動く人形でディスプレイされ、それぞれ違った人形とストリーで構成されている。多くの人だかりだが子供たちのためにウィンドウの前に子供専用のスペースが作られている。
 3)シャンゼリゼ通りのイルミネーション、照明の色が変化しそれが円盤に反射してきらきらと輝いて美しい。

 写真撮影・筆者