欠田誠のマネキンの世界
第60話 少子化と豊かさと

 今年、成人(成人の日・2012年1月9日)を迎えた人は122万人、これは過去最低の記録で、最も多かった年の半数以下だそうです。日本の人口は戦後間もなく第一次ベビーブームがありその人たちが成人した1970年代前半の第二次ベビーブーム以降、減少傾向が続き今日に至っています。今日の少子高齢化の現象はかなり深刻な問題ですが人口の推移は急に現れるものでは無く、やはり国の対策の遅れや政策の誤りなどは無視できないと思います。今年は政治の財政重要課題として、少子高齢化対策を挙げて、国の成長基盤つくりを掲げていますが、その一方では若い人たちの就職難が大きな問題となっています。

 私は後期高齢者ですが、若い人口が減って高齢者ばかりが増えると言うことは忌々しいことです。若い人たちが結婚して、子供を生み育てる生活に、喜びや幸せを感じられる社会であるかと言うことですが、これは経済的な問題だけでないことは確かです。人生の豊かさ、幸せと言う価値観には多くの要素が係わっています。経済的に発展途上といわれる国々の出生率が高く、先進国と言われる国々の出生率が低いと言う現実があります。今、急速に経済成長しつつあるベトナムでは一家に4~5人の子供は普通ですが今は結婚しても子供は2人までと決められています。中国では1人ですが、すでに少子高齢化を危惧する動きが見られるとの事です。それでも中国の人口は多くそれに貧富の差がとてつもなく大きな国、ベトナムは絶え間ない戦争の歴史を持った国で、ベトナム戦争が終わって約30年、国民の平均年齢は若く28歳だそうで、60歳以上は10%、それぞれの国の人口問題は他にも多くの要因があっての事で簡単に語られる問題ではありませんが、正に可能性を秘めた発展途上の国です。

 昨年日本は未曾有の大天災、人災に見舞われ、今年は災害からの復興元年と言われています。私は以前のエッセイでも書きましたが戦争による敗戦からの復興を日本の第一次復興とすれば今回は日本の第二次復興と思っています。第一次復興は驚く速さで世界が認める経済大国を作り上げました。然しそこには、かなりの部分で心の豊かさを伴わないゆがんだ経済立国の姿を感じざるを得ません。第二次復興はその反省を生かさなければならないと思うのです。

 先月パリに行った時に感じたのですが、ルーブル美術館で小学生のグループが先生に引率されてフラアンジェリコ(1387-1455 初期ルネッサンスのイタリア人画家)の絵をみんなで床に座って鑑賞していました。おそらく授業の一環だと思いますが、さすがにルーブル美術館は観光客で混雑しており、決して学習に適した環境とはいえません。そこは数人の先生が生徒たちをガードしている様子を見て、日本では考えられない情況に感動しました。優れた美術、文化に小学生から(だからこそ)触れさせることは豊かな心を育むために、とても大切なことです。

 ちょうどクリスマスの時季でパリのデパートのウインドウはクリスマスのディスプレイで賑わっていました。

 可愛い人形達が動いて音楽を奏でたり、物語を演じたり子供たちが喜ぶディスプレイですがどのウインドウも人だかりで容易に見ることが出来ません。然しウインドウの前に子供専用のステージが作られておりそこで子供たちはディスプレイを楽しそうに見ています。パリの街は海外から大勢の観光客が訪れ何処も混雑して、パリ市民が自国の美術や街をゆっくり楽しめない情況ですが、毎月、第2日曜日は終日ルーブル美術館やオルセー美術館やポンピドー近代美術館などは入場無料にして市民に開放し、その日は団体客や観光客が使うイヤホーンの使用は禁止するなどの処置を講じています。子供たちに美術やディスプレイを積極的に鑑賞させる心くばりには伝統的なものを感じます。フランスも少子化問題を抱えた国ですが、今、少子化対策が功を奏した国として、世界の国々から注目されているそうです。いろいろな分野での政策があってのことでしょうが、文化国家を自称する日本の少子化対策は新政権がマニフェストに掲げた子供手当てなど経済的支援のほかに子供たちが心豊かに育つ文化的な環境を作ることが大切だと思います。日本の第二次復興はより心の豊かな、正に『この国に生まれてきてよかった』と思える国つくりをいろいろな分野の力を合わせて実現したいものです。
写真上段より:
 1)パリ・ルーブル美術館にて
混雑の中、授業は先生も生徒も大変、生徒はイヤホンで先生の講義を聴いている
 2)パリ・ルーブル美術館にて
観光客で広い美術館内は大変な混雑・撮影はフラッシュを使わなければ自由

 写真撮影・筆者