欠田誠のマネキンの世界
第66話 第9回国際フラワーEXPO

 この度、横浜ディスプレイミュージアムの新しい企画に参加させていただくことになり、私は『花と女』というテーマでオリジナルな花器の原型を創る貴重な体験をすることになりました。製品はセラミックを素材に作られるということで、私はこの企画に強い関心を持ちました。というのは、以前、美術館のアートショップで美しいセラミック磁器の作品を見つけ購入したことがありましたが、以来セラミックという素材に注目するようになり、いつか私もセラミックで作品を作ってみたいと思っていたのです。

 すけるような薄さでも丈夫な陶磁器、セラミックスは陶器の世界ばかりではなく、いろいろな成型物として日常生活の多くの場で使われており、公共的な大量生産の物からアート作品まで幅広く対応できる魅力的な素材だと思います。早速、瀬戸にセラミックの工場を訪ね。生産の工程を見学させていただき、素材と工法についてより理解を深めることにしました。

 私は京都での七彩時代に、前衛的な陶芸運動の団体・走泥社・の八木一夫さんや鈴木治さんが七彩の作品創りに協力されていたこともあって、所謂オブジェ焼きといわれた陶芸に興味を持ち、私も粘土で作品を作って 鈴木治さん の窯 で焼いてもらったりしていましたので、陶芸とのかかわりは結構深かったと思っています。八木一夫さんも鈴木治さんもすでに故人となられましたが、東京に来てからは、神奈川県座間市で陶芸教室を主宰されている蛇石克郎さんの窯でお願いして、たまに陶器で作品を作ることがありますが、私にとって『焼き物』の魅力といえば素材感は勿論ですが、粘土で作った物がそのまま作品になる(型をとる必要が無い)勝負の早さ、それに窯で焼くことで得られる思いがけない一品制作の効果などですが、量産システムによるセラミックは同じ焼き物でも全く違った発想での造形が必要であることがわかりました。むしろ工業製品を作るような感性が必要で、それがあの丹精な清潔感あふれた美しい作品に通じることが理解できます。先ず生産する為の型を作る作業が重要でキャリアを積んだ職人さんの技術によって作られます。同時に型作りのための造形上の制約があります。私は今回この部分でのやり直しや修正をかなり経験しました。少しでも変わった物を作りたいと思うと、つい複雑な形を作ろうとしがちですがそれはタブーです。私はまだセラミック磁器の良さを生かした形というものを理解出来ていませんので、どんな形でも復元できるFRP樹脂で物を作る思いから抜けることが出来ません。粘土は乾燥させ更に窯で焼き絞めることである程度の変形と収縮は免れません。これも形を作る上での制約ではありますが、それが陶芸の特長であり味わいでもあると思います。収縮率は14%で、そのための金尺が瀬戸では市販されているのには驚きました。この金尺は正確な原型作りには欠かせないそうです。

 小品にしてはかなり時間がかかりましたが何とか5点原型を完成させ、10月10日(水)から12日(金)まで幕張メッセで開催された第9回国際フラワーEXPOで・横浜ディスプレイミュージアムの出展ブース・の一部にスペースを作っていただき無事に展示を終えることが出来ました。会場では横浜ディスプレイミュージアムの企画の斬新さが多くの来場者の注目を集めたようです。

 私は今回の経験で、街に出ても花器や生花や造花などが特に気になるようになりました。私の秩父のアトリエは自然の草花に囲まれた緑豊かな山の中ですが、庭の景色が今までと違って見えるようになり不思議な感じがします。
写真上段より:
 1)第9回国際フラワーEXPO会場風景
 (撮影・筆者)