欠田誠のマネキンの世界
第73話 『時をかける等身大人形』展にちなんで

 『時をかける等身大人形』―細工人形・菊人形から・マネキン・フィギュア・ロボットまでー という展覧会が2013年11月16日(土)〜12月23日(月・祝)まで愛知県高浜市の、かわら美術館で開催されました。この地は三州瓦で有名なやきものの里として知られていますが、同展のカタログ紹介によると、高松市の吉浜地区は、江戸時代より細工人形作りが行われ、明治時代以降は吉浜出身の菊人形を作る職人(菊師)が全国各地で活躍されており昭和39年(1964年)には「吉浜の細工人形つくり」が愛知県の無形文化財に指定されたそうです。

この度の展覧会はこの地域に相応しい企画(かわら美術館 平成25年度特別展)だったと思います。

近年、彫刻・マネキン・フィギュア・人形などといったジャンルの境界を越えて人体の造形作品を紹介する展覧会が多くなってきましたが今回の展覧会はそれぞれの作家が作るさまざまな等身大の人体造形作品を通して等身大の人の姿、形を作ることの意味を探るといった珍しい企画でした。

 出品の作品『仲間』は1971年七彩工芸のスタッフと目を開いたまま顔の型取りをする技術(FCR技法と命名)を開発し作者自身をモデルに制作、国際美術展などに出品したもので、スーパーリアルマネキン誕生のきっかけとなった思い出の深い作品です。出品の3点は原型作家の加野正浩さんとのユニットで制作したもので現在は東京都現代美術館に所蔵されています。写真左の立っている男性が加野正浩さん、椅子に腰掛けている女性はモデル嬢、座ってタバコを吸っているのが当時の私です。久し振りに若かりし時代の自分と対面して来ました。

 等身大の人型は人間の変わりに、それぞれ役割を持って作られると言えるでしょう。マネキンの原点は生きたモデルに変わりその役割を担って作られたもので、服を着せる為に使われるマネキンは等身大が基本の条件になりますが、更にその時代の流行や好みを如何に表現するかが重要なテーマであり、マネキンはその時代を鏡のように写し出すものです。

 今日FCR技法は主にマネキンの手先の原型を作る手法として多くのマネキン企業でも使われ一般化しています。人間と同じような動きをする人形としては、からくり人形など作られてきましたが今日動く人形の最先端はロボットでしょう。一方、形を作る最先端の技術は3Dの開発だと思います。ここ数年3Dは急速に普及しディスプレイの世界でも実用化されています。3Dの技術を生かすことで新しいマネキン造形の可能性は広がるでしょう。いつの時代でも新しい技術や素材は新たなマネキンを誕生させ、マネキンの歴史が作られてきました。今市場のマネキンは相変わらず卵のような形や抽象的なヘッドのマネキンが主流でこの傾向はもう何年も続いています。新しいタイプのマネキンを希望するデザイナーの声も聞かれますが、卵のような形のヘッドに顔を描いたり、かつらを付けたりしてその店らしさ、差別化を試みているのが現状です。マネキンが使われるステージは多様ですが優れたリアルマネキンの持つ訴求力はとても大きなものがあります。新しいマネキンが生まれるその背景には大きなうねりのような時代の流れがあるものです。それを一口で言えば機が熟すという事でしょうか。

『時をかける等身大人形』展はマネキンの意味、役割について改めて考えさせられる機会でもありました。
写真上段より:
 1)第2会場入り口風景
 2)出品作『仲間』
 撮影・筆者