欠田誠のマネキンの世界
第76話 FRP樹脂と造形

 樹脂で作られた製品は日常生活のあらゆる場で使われており私達は樹脂の製品に囲まれて生活していると言っても過言ではありません。然し樹脂の歴史はそれほど古いものではなく、日本でFRP樹脂製のマネキンが誕生したのは1959年の事です。今世界のマネキンはFRP樹脂製が定番になっていますが、これは日本が世界に先駆けて開発したものです。

 それからせいぜい50年ほどの期間に、今日、樹脂は美術界でも『現代の素材』として認知され彫刻に限らず樹脂性の絵の具、塗料など美術に係わる素材としても広く使われています。

 造形の素材として樹脂は原料そのものに着色剤を混ぜていろいろな色に成型する事が出来ますし、後から作品に彩色する事にも適しており、更に金属メッキも出来るなど、多彩な表現が可能であり美術展などでブロンズや木、石あるいは陶器の作品と思って見ていた作品が実は樹脂で作られていることは珍しくありません。想像以上に樹脂で作られた作品は多いものです。

 とは言え彫刻家は作りやすさや便利さだけで素材を選ぶわけでなく、石や木や鉄など特定の材料に惚れ込んで作品を作る作家は勿論多く、彫刻家はそれぞれ素材に独自な見解を持っているものです。私はマネキンの仕事でFRP樹脂と出会い、いろいろな成型技術を経験することになりました。マネキンは実際に服を着せてウインドウや店の売り場などで使われる物でありその性質上の制約が多く、作者の好みで材料を選ぶわけにはいきません。今のところFRP樹脂はマネキンに最も適した素材ですが、社会の情勢が変化する中で決してパーフェクトな材料ではなく より良い素材を 開発すべく研究が続けられているのが現状です。

 写真はFRP樹脂の使い方をいろいろ試みて新たなボディを制作し展示会で発表した作品の一例です。ボディがまだ珍しい時代でしたが、その後ボディに需要は次第に高まり今日の膨大なボディ市場の出現につながったと思います。当時のマネキン企業は自社のオリジナル商品の開発が活発で新作発表の展示会は毎年、北海道から九州まで主な都市で開催されていました。ときには年に2回展示会を行う事もありました。提案し続ける事が我々の使命であり、自分たちがディスプレイの動向に深く係わっているという実感がありました。

 今日のマネキン企業はメーカーのオリジナルな商品開発よりユーザーからの需要を受けて商品を作る所謂別注対応による商品作りのウエイトが高くなりそれが市場でのマネキンの類型化に繋がっていると思います。いつの時代でも新たな商品の開発にはリスクが伴いますがそれを避けて発展は望めないと思います。

写真上段左より:
 1)WB-18 強化プラスチックに和紙貼り込み。
 (姉妹品にウレタン塗装のものがある)
 1962年 原型制作 欠田 誠
 2)WB-19 角度が自由になる 壁に取り付けることも出来る
 1962年 原型制作 欠田 誠
 3)WB-20 ボディは強化プラスチック
 ウレタン塗装仕上げ、上下にポリエステル注型のアクセサリーがついている。
 肩と胸を普通サイズで作ってあるので着せ付けは簡単である。
 1962年 原型制作 欠田 誠
・写真および商品説明・ 七彩工芸(現・七彩)カタログより抜粋